https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250809/k10014880511000.html
トランプ政権で台頭
テックライトの教祖」が語る“野望”とは
「最も効率的で、一番うまくいくのは王制だ。それが、私たちの時代に最適なガバナンスの形だと思う」
こう話すのは、「テックライトの教祖」とも呼ばれるシリコンバレーの思想家、カーティス・ヤービン氏です。
イーロン・マスク氏やバンス副大統領など、「テクノロジー」と「右派」を合わせた「テックライト」と呼ばれる人たちが存在感を増すアメリカ。
「テックライトの教祖」ヤービン氏とは
NHKの単独インタビューに応じたシリコンバレーの思想家、カーティス・ヤービン氏。バンス副大統領の友人であり、マスク氏が新党立ち上げに当たって会談したとされる人物です。
暗黒啓蒙と呼ばれる右派の思想を代表する論客で、官僚制度をすべて撤廃すべきだと主張しています。
カーティス・ヤービン氏
「官僚組織は非効率的なだけでなく、国家運営の観点からもバカげたことをするほど有害になってしまう。動脈硬化のようなものだ。あらゆる組織がそうであるように、柔軟性が失われる。加齢とともに」
ヤービン氏は1973年、外交官の家庭に生まれました。カリフォルニア大学バークレー校のコンピューターサイエンスの博士課程を中退してテック系企業に就職した後、2013年にサンフランシスコを拠点とするスタートアップTlon Corpを共同設立しました。
その頃出資を通じて知り合ったのが、テックライトに強い影響力を与えている起業家・投資家のピーター・ティール氏でした。
ティール氏はネット決済サービスの先駆けとなる企業を創業し、イーロン・マスク氏の企業と合併してPayPal社を設立。巨万の富を築き上げた投資家です。一貫して共和党を支持してきたテックライトのいわば先駆者で、幅広い層のテック企業に強い影響力を持っています。
バンス副大統領が設立した投資会社に巨額の資金を投じるなど、「後見人」的な存在でもあります。
“いまの民主主義は、既得権益層による寡頭政治”と主張
ヤービン氏は、官僚制度や大学、既存のメディアなどを既得権益層として批判。中世の権力になぞらえて「大聖堂」と呼んでいます。
なぜそのように考えるのか、まず問いました。
カーティス・ヤービン氏
「戦後の西側世界で『民主主義』と呼ばれるものについて語るとき、私たちが意味するものは何か。それは、アメリカの文脈では『能力主義』とも呼ばれているが、基本的には権威ある組織による支配だ。例えば、大学という機関には永続的な名声がある。官僚には永続的な終身在職制度があり、大学の意見で物事を決めている。つまり、『民主主義』という言葉の文字どおりの意味とは、ほとんど関係のない権力システムになっている」
「大聖堂とは、簡単に言えば西洋社会の頭脳のことだ。最も権威のある大学、最も権威のあるメディアに偏っている。ニューヨーク・タイムズで何かを読んだり、ハーバード大学で何かを学んだりするのと、フェイスブックでうわさとして目にするのとでは、権威がまったく違う。だから、こういった機関はとても強力だ」
「『民主主義なんだから投票しなさい』『どんな考えを信じるべきかすでに伝えてあるし、投票すべき候補者のリストも渡してある』と言われる。しかし、選挙で誰が勝っても、実際には政府のあり方を変える権力はない。だとしたらそれは何なのか。それは『民主主義』とは呼ぶべきではない」