最低賃金 過去最大63円引き上げへ
全都道府県で1000円超に
最低賃金について議論してきた厚生労働省の審議会は、
4日、全国平均の時給で63円引き上げるとする今年度の目安を示しました。
額としては過去最大で、この目安どおり引き上げられれば全国平均は1118円となり、すべての都道府県の最低賃金が1000円を超えることになります。
目次
厚生労働省の審議会は労使などの代表が出席して最後の議論を行い、
今年度の最低賃金の引き上げ額について、全国平均の時給で63円とする目安を取りまとめ、4日夜、福岡厚生労働大臣宛てに答申しました。
目安の額としては過去最大で、地域ごとの目安は、
東京、大阪、愛知などAランクの6都府県が63円、
北海道、兵庫、福岡などBランクの28道府県が63円、
青森、高知、沖縄などのCランクの13県が64円です。
Q&Aで詳しく
Q.最低賃金とはどういう制度?
A.最低賃金は「最低賃金法」という法律に基づき国が賃金の最低額を定めて企業がその額以上の賃金を労働者に支払わなければならないという制度です。
この最低賃金は時給で示され、現在、最も高いのが東京の1163円で、最も低いのが秋田の951円と各都道府県で金額が異なります。
アルバイトやパートタイマーといった時給制で働く人だけでなく、月給制の正社員や契約社員なども対象で、名称や形態にかかわらず原則として雇用されて働くすべての人に適用されます。
もし、企業が支払う賃金が最低賃金を下回る場合、経営者や事業主などの使用者に50万円以下の罰金が科されることになります。
Q.どうやって決まるの?
A.毎年6月から8月ごろ、厚生労働大臣が諮問する「中央最低賃金審議会」が議論を行い、まず引き上げ額の目安を示します。
審議会は▽大学教授などの公益代表、▽労働団体や労働組合などの労働者代表、▽経済団体などの使用者代表で構成されています。
この公労使の3者が▼労働者の生計費、▼労働者の賃金、▼企業の賃金の支払い能力の3つの要素を勘案して、目安を時給で示します。
そして、各都道府県の労働局長が諮問する「地方最低賃金審議会」が議論を行い、示された目安を参考に地域の実情を踏まえたうえで、都道府県ごとに実際の引き上げ額が決まり順次、適用されます。
Q.今後の注目点は?
A.昨年度は、50円の目安が示されましたが、徳島県ではそれより34円高い84円で決着するなど目安を上回る引き上げが相次ぎました。
今年度は各地で金額がどうなるのか注目されます。
また、例年ならば10月以降となる新しい最低賃金が適用される日も焦点です。
今回の「中央最低賃金審議会」では、最低賃金に近い賃金水準で働く人の賃上げを遅らせるべきではないという意見が出た一方、近年、引き上げ額が過去最大を更新していて、中小企業のなかには時間的に余裕がないところも増えているという意見もあり、各地の「地方最低賃金審議会」で、十分に議論を行うよう要望しています。
Q.最低賃金が引き上げられると企業の負担は大きくなるけれど支援策はあるの?
A.厚生労働省は、中小企業や小規模事業者が、生産性向上のための設備投資や教育訓練などを実施し、職場で賃金が最も低い労働者について一定額以上の賃上げを行った場合、これらの取り組みにかかった費用の一部を助成しています。
また、政府は、新たな支援策として、厚生労働省の審議会が示した目安を超えて最低賃金が引き上げられた都道府県で国の補助金などを使い重点的な支援を行う方針を示しています。
こうした支援を通じて生産性向上に取り組み最低賃金の引き上げに対応する中小企業や小規模事業者を大胆に後押しするとしています。