労災保険料「周知ミス」で徴収漏れ 807建設業者5700万円、検査院指摘 - 日本経済新聞
労災保険料「周知ミス」で徴収漏れ
807建設業者5700万円、検査院指摘
勤務中に病気やけがをしたときに給付される労災保険(労働者災害補償保険)の保険料について、約800の建設業者に対し計約5700万円の徴収漏れが生じていたことが22日、会計検査院の調べで分かった。一部の労働局が周知した算定方法に誤りがあったなどとして、検査院は厚生労働省に是正を求めた。
検査対象は全国47労働局の管内にある1050の建設事業主。2022〜23年度分の保険料の納付状況を調べたところ、807事業主の対応に不備が見つかった。検査院はこれまでにも同様の徴収漏れを指摘しており、具体的に改善策をとるよう要請した。
建設業の事業主は、1つの工事を1事業とみなし、原則として1事業ごとに労災保険料を納付するよう定められている。工事が小規模で工費が一定額以下の場合は、複数の工事を一括して1事業とみなすことになっており、保険料の算定では該当する全ての工事を労働局に報告する必要がある。
検査の結果、報告に漏れがあった480事業主から計約4153万円を徴収できていなかったことが判明した。
このほか事務所や自社倉庫などで継続的に業務に当たる従業員がいる場合は工事現場の作業員向けとは別に保険料を納付する必要がある。検査院によると、382事業主は適切な手続きを取っておらず、計約1618万円を納付していなかった。
検査院は、事業主に対する周知が十分でなく、誤って案内しているケースもあったと判断。厚労省が労働局に対して正しい手続きを明示していなかったとして、検査院は労働局への指導を同省に求めた。
さらに今回の検査がなければ徴収漏れを労働局が把握できなかった可能性がある点も重視。労働局が着実に保険料を徴収できるような調査方法を再検討し、マニュアルを改訂するよう要請した。
検査院の指摘を受け、厚労省の担当者は「問題を指摘された保険料の取り扱いに関して各労働局に通知し、適正化を図っていく」とコメントした。