作成日:2023/11/17
★★ 2024年・春闘賃上げ率の見通し <第一生命経済研究所
https://www.dlri.co.jp/report/macro/290017.html
2024年・春闘賃上げ率の見通し
〜春闘賃上げ率は+3.70%と、23年並みの高い伸びを予想〜
- 要旨
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- 2024年の春闘賃上げ率を3.70%と予測する(厚生労働省ベース)。24年春闘でも、23年(3.60%)並みの高い賃上げが実現するだろう。なお、春闘賃上げ率においては、厚生労働省よりも公表時期が早い、連合による集計値が注目されることも多い。この連合ベースの数字で見ても、24年のベースアップは2.2%と、23年春闘の2.12%並みの高い伸びになると予測する。
- @物価高への配慮、A底堅い企業業績、B人手不足感の強まりが賃上げ率の押し上げ要因になる。賃上げが物価上昇に追い付かない状況が長期化していることへの問題意識は高まっており、24年春闘でも物価高への配慮がみられるだろう。企業業績は底堅く、利益水準も高いことから賃上げ余力も存在することに加え、人手不足感が強まっていることも人材確保の面から賃上げに繋がる。
- 連合が前年以上の賃上げを目指し、23年春闘よりも賃上げに向けてのトーンをやや強めていることに加え、経営側も物価高に対して一定の配慮を示しており、ある程度の賃上げは容認する姿勢を見せている。組合側、経営側とも賃上げに対して比較的前向きで、賃上げ機運は高まりつつある。
- こうした状況は日銀にとっても追い風だ。春闘の結果を確認した上で、賃金と物価の好循環実現の確度が高まったとして政策修正に動く可能性がある。また、既に一部の企業では来年度の高い賃上げ実施を表明しているが、こうした企業が今後増加し、24年春闘での高い賃上げが確実視されるようになる場合、春闘の結果を待たずして金融政策の修正に踏み切る可能性も否定はできない。
- 賃上げが23年限定ではなく、24年春闘でも続く可能性が高まっていることは日本経済にとっての好材料だ。だが、それでもこうした賃上げが消費の活性化をもたらすには力不足だ。実質賃金でみると24年度平均でゼロ%近傍にとどまる見込みである。コロナ禍で抑制された水準からのペントアップ需要が24年度には弱まることもあり、春闘賃上げをきっかけに消費が力強さを増すというシナリオが実現するハードルは高い。
24年春闘でも高い伸びが実現か
2024年の春闘賃上げ率を3.70%と予測する(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベース)。23年春闘では賃上げ率が3.60%と、1993年の3.89%以来、30年ぶりの高い伸びとなっていたが、24年春闘でも、23年並みの高い賃上げが実現するとみられる。また、賃上げ分のうち、定期昇給部分(1.8%程度)を除いたベースアップで見ると1.9%程度(23年:1.8%程度)と予想する。なお、春闘賃上げ率においては、厚生労働省よりも集計値の公表時期が早い、連合による集計値が注目されることが多い(第1回の集計値が3月中旬に公表)。この連合ベースの数字で見ても、24年のベースアップは2.2%と、23年春闘の2.12%並みの高い伸びになると予測する。