作成日:2025/11/22
★★ 2026年・春闘賃上げ率の見通し
2026年・春闘賃上げ率の見通し 〜25年比でやや鈍化も、高い伸びが持続と予想。キーワードは「さらなる定着」〜 | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所
2026年・春闘賃上げ率の見通し
〜25年比でやや鈍化も、高い伸びが持続と予想。
キーワードは「さらなる定着」〜
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2026年の春闘賃上げ率を5.20%と予測する(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベース)。日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト調査(11月調査)」では4.88%が見込まれているが、これを上回るとみている。25年春闘の5.52%こそ下回るものの、3年連続で5%台の高い賃上げが実現するだろう。
春闘においては、厚生労働省よりも公表時期が早い、連合による集計値が注目されることが多い。この連合ベースの数字では、26年の春闘賃上げ率を4.95%と予測する(25年春闘:5.25%)。5%台に乗るかどうかは微妙だが、こちらも歴史的にみれば非常に高い賃上げになるだろう。
現時点で、組合側、経営側とも賃上げに前向きな姿勢を示している。連合は10月23日に公表した26年の春闘基本構想において、「+5%以上」(うちベースアップ+3%以上)の賃上げを要求の目安とすることを決めた(中小は6%以上)。これは前年と同水準であり、賃上げ継続への意欲が示されている。また、報道によると、経団連の経労委報告原案では「賃上げのさらなる定着」が強調されるなど、経営側も賃上げに前向きだ。トランプ関税などの不透明要因があるなかでも、賃上げ姿勢がトーンダウンしている様子は窺えない。
@深刻化する人手不足、A歴史的な物価高の継続と実質賃金減少への対応、B高水準の企業収益、が高い賃上げの背景にある。まず@について、生産年齢人口の減少が続くなか、人手不足は一時的なものではなく構造的なものであるとの認識が広がっている。若年層を中心に転職も増加しており、企業は人材確保のための賃上げを行わざるを得ない状況だ。24、25年春闘では人手不足感の強まりが賃上げに大きく寄与し5%台の賃上げが実現したが、26年春闘でも新規採用や既存人材のつなぎ止めのための賃上げが実施される可能性が高い。
Aの要因も大きい。物価上昇率については、春闘交渉のタイミングではその年度の実績が判明していないことから、暦年の結果が参照されることが多い。26年春闘で交渉の材料となる25暦年の物価は、CPI総合、CPIコアとも前年比+3%を上回ることが予想され、24暦年(総合で同+2.7%、コアで同+2.5%)から加速している。24年、25年の春闘では「歴史的な賃上げ」が実現したとされたが、一方で「歴史的な物価高」が進んだことから実質賃金は減少が続いており、家計は賃上げの実感を持てていない。この点への問題意識は労使ともに強く、春闘基本構想や経労委報告でも実質賃金への言及が増えている。物価高に負けない賃上げを行うことは企業の社会的責務との声も強まっており、26年春闘でも物価高への配慮がみられるだろう。
Bについて、トランプ関税の影響(関税引き上げに対応した輸出価格引き下げ)により自動車関連企業の業績は下振れが目立ち、企業業績全体でみても伸びは鈍化している。一方、それ以外の業種、特に非製造業では価格転嫁の進展もあって業績は底堅く推移している。企業収益の水準も高く、労働分配率も大企業では低水準にあることから、企業の賃上げ余力は十分存在するとみて良い。
企業業績が鈍化していることの影響で、25年春闘と比較すれば上昇率はやや鈍化が見込まれるが、それでも26年春闘では5%台の高い賃上げが実現する可能性が高まっている。このことは、賃上げの持続性に注目する日本銀行にとっても利上げの追い風となるだろう。
第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
























