https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250217/k10014724921000.html
どうなる?“就職氷河期世代”の賃上げ
ことしの春闘は来月(3月)の集中回答日に向けて、賃上げに向けた交渉が本格化しています。
注目されているひとつが中高年層の賃上げですが、賃金の伸びを比較すると若年層に比べて低くなっていて、
専門家は「就職氷河期世代を含む中高年層は非正規で働いた期間が長い人もいて、今後も賃金が上がらなければ、将来、生活に困窮するリスクもある」と指摘しています。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によりますと、
去年(2024年)の速報値で、
一般労働者の所定内給与の平均額は月額33万200円で、
コロナ禍前の2019年と比べて2万4200円、率にして7.9%増加しました。
中高年層の賃上げ 若年層に比べ低く

どのくらい増えたかを年代別で見ると、
▽19歳以下が11.0%、▽20歳から24歳が10.0%、▽25歳から29歳が9.6%、▽30歳から34歳が8.8%、▽35歳から39歳が7.9%、▽40歳から44歳が7.0%、▽45歳から49歳が6.9%、▽50歳から54歳が2.8%、▽55歳から59歳が7.5%、▽60歳から64歳が12.9%、▽65歳から69歳が11.3%、▽70歳以上が8.5%でした。
初任給のアップなど賃上げが進む若年層に比べて中高年層の賃上げが進んでいないことについて、
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは、
「少子化が進む中、若い人たちの獲得競争が激化していて、30万円や40万円といった初任給に象徴されるような高い賃金を提示するという企業が増えている。中高年層は転職による人材流出のリスクが比較的小さく、企業も若い人の給料を優先的に引き上げていると考えられる」と指摘します。
就職氷河期世代 QAでさらに詳しく
バブル経済崩壊後の雇用環境が特に厳しかった時期に就職活動を行っていた「就職氷河期世代」について詳しく見てみます。
Q.就職氷河期世代とは?
A.明確な定義はありませんが、国は1993年から2004年ごろにかけて就職活動を行っていた人たちを「就職氷河期世代」としています。
大学や高校を卒業したものの、希望する正社員になれずパートやアルバイトなどの非正規雇用で働いたり、仕事に就くことができなかったりした人が少なくありませんでした。
学歴で異なりますが、現在の年齢はおおむね50代前半から30代後半で、全国で1700万人以上いるとされています。
Q.就活はどのくらい厳しかったの?
A.文部科学省の学校基本調査によると、大学を卒業した人に占める就職者の割合は、1993年以降、減少傾向が続きました。
2000年からは6年連続で50%台で2003年は最も低い55.1%でした。
同じ調査で去年(2024年)は76.5%でしたので、20ポイントも低い状況でした。
Q.今の経済状況はどうなっていますか?
A.金融資産が少ない人の割合が高まっているというデータもあります。
金融経済教育推進機構は2人以上の世帯における預貯金や株式などの金融資産の保有状況について毎年、調査しています。
このうち、金融資産を保有していると回答した40代は、2014年の時点では「300万円未満」が21.4%で、このうち「100万円未満」が6.7%でした。
それが去年(2024年)は「300万円未満」が31.6%でしたが、このうち「100万円未満」は15.1%でした。
Q.対策は進んできたの?
A.国は2024年度までの5年間、ハローワークに専門の窓口を設けるなどして支援プログラムを実施しました。
内閣府によりますと、2019年から2023年にかけて、正規雇用の労働者は会社役員を含めて21万人増加したということです。
国は新年度以降、就職氷河期世代を含む中高年層への支援に幅を広げ、就労に向けた相談やリスキリングの支援などを継続していくことにしています。
Q.春闘での議論は?
A.労働団体の連合はことしの春闘の方針で、「近年、人材確保のために初任給を大幅に引き上げる一方で、中高年層への配分を相対的に抑制するなどの傾向がみられた」と強調しています。
そのうえで、「労使でしっかりと協議し、すべての人の生活向上をめざす必要がある」と指摘します。
経団連が去年(2024年)、会員の企業を対象した調査で基本給を引き上げるベースアップをどの年代に重点的に配分したか尋ねたところ、最も多かったのが「一律定額配分」という回答で51.1%でしたが、「30歳程度までの若年層」は34.6%だったのに対して、「30歳から45歳程度の中堅層」が9.4%、「45歳程度以上のベテラン層」が1.1%となりました。
来月の集中回答日に向けて企業側がどのように対応するのか注目されています。