作成日:2024/12/09
★★ 2025年春闘は5.0%の平均賃上げ率を予想
2025年春闘は5.0%の平均賃上げ率を予想
〜物価と生産性は減速も人手不足感が下支え、26年も高水準か〜
ポイント
2025年春闘の平均賃上げ率は5.0%(ベア:3.5%)と予想する。
日本が金融危機の最中にあった1998年 以前の積極的な賃上げスタンスが2024年から定着したと想定
生産性と物価の伸び減速による下押し効果(▲0.4%ポイント)を人手不足感(+0.2%ポイント)が一 部相殺し、昨年並みの水準が維持されよう
2026年春闘では、トランプ次期米大統領による関税賦課や円高などにより生産性が悪化し、物価の伸び も縮小するとみられるが、人手不足感の高まりが下支え役となり、4.8%程度の平均賃上げ率を見込む
1.春闘賃上げ率は高水準継続へ 2024年春闘の平均賃上げ率は5.10%と、 1991年以来33年ぶりの高水準となった。
定期昇給を除いたベアが3.56%に上昇し たことが主因である。
連合の平均集計方式 による集計組合員数293万人(2024年7 月)のうち、大企業(従業員数1,000人以 上)の組合員が約7割を占めるため、平均 賃上げ率は主に大企業の動向を反映して いる。
本稿では、過去の春闘を振り返りつ つ、2025年春闘を展望する。以下のモデル 分析から、2025年は5.0%、2026年は4.8% の平均賃上げ率を予想する(図表1)。
4.2025年春闘の平均賃上げ率は5.0%、26年は4.8%と予想 2025 年春闘を展望するにあたり、前提条件となる2024年度の経済要件を考える。
法人企業統計において、2024 年4〜9月期の大企業(資本金10億円以上)の経常利益は前年同期比+11%であり、2023年4〜9月期(同+12%) とほぼ同じ伸びである。
そこで、2024年度単年の名目付加価値は2023年度並みの伸びを想定し、一人当たり実 質生産性の3ヵ年後方移動平均値をとって、前年比を求めると+4.0%となる。
2023年度(前年比+6.1%)から は減速するものの、2年続けての4%越えはバブル期(1988年:同+4.5%、1989年:同+6.0%)以来である。
2024 年度の失業率は 2023 年度の 2.6%から 2.5%への低下を見込み、物価は消費者の生活実感に近いとされる 「持家の帰属家賃を除く系列」で同+2.8%を想定する(コアベースで同+2.4%)。
これらの変数をインフレモデルに適用すると、2025 年春闘の平均賃上げ率は 5.14%となる。
2024 年推計値 (5.41%)からの変化要因は、生産性が▲0.2%ポイント、物価が▲0.2%ポイント、雇用情勢が+0.2%ポイント であり(図表2)、物価と生産性の伸びが減速するものの、人手不足感の高まり(失業率の低下)によるプラス効 果がマイナス幅を一部相殺するとみられる。
2024年春闘の平均賃上げ率が推計値から若干下振れたことを考慮し て、2025年春闘の平均賃上げ率は5.0%と予想する。
2025 年度は、トランプ次期米大統領による関税賦課や円高などにより企業収益の伸びが減速する可能性があ る。もっとも、春闘平均賃上げ率に有意に効くのは一人当たり実質生産性の3ヵ年後方移動平均であり、たとえ 2025 年度単年の名目付加価値が前年比横ばいと仮定しても、平均賃上げ率の急減速は回避されることをインフレ モデルは示唆する。物価の伸びが減速することを踏まえても、失業率の低下傾向の継続が下支えとなり、
2026年 春闘の平均賃上げ率は4.8%と、高水準を継続すると予想する。
明治安田総合研究所