https://www.dlri.co.jp/report/macro/387930.html
2024年・冬のボーナス予測
〜前年比+2.7%と高い伸びを予想〜
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民間企業の2024年冬のボーナス一人当たり支給額を前年比+2.7%と予想する(毎月勤労統計ベース)。冬のボーナスとしては4年連続の増加となるだろう。
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11月7日に厚生労働省から公表された24年夏のボーナス(賞与支給事業所における労働者一人平均賞与額)は前年比+2.3%と3年連続で増加した。今回注目されるのは、賞与の支給事業所割合が増加していることである。業績の改善等を背景に、昨年賞与が出なかった事業所においても今夏は支給されたところが増えている。特に中小企業においてこうした状況が目立っており、人材確保の面から待遇を改善しようという動きが生じた可能性が示唆される。この支給事業所の増加による影響を考慮した「全事業所における労働者一人平均賞与額」で見ると、今夏のボーナスは前年比+5.7%と大幅な増加となっている(昨夏:前年比+1.5%)。
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ボーナス大幅増の背景にあるのは好調な企業収益である。円安効果で製造業の収益が上振れたことに加え、非製造業も価格転嫁の進展から業績は好調である。ボーナスは業績を反映して決定されやすいことから、こうした好業績が大幅な賞与増に繋がっている。また、物価高への配慮や人材確保の観点からボーナスを増額した企業も多かったようだ。春闘での高い賃上げが実現する一方で、ボーナスを抑制するなどして企業が人件費総額の大幅な増加を回避するのではないかとの見方も以前はあったが、こうした懸念は杞憂に終わったようだ。
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こうした流れが続くことで、冬のボーナスも増加が予想される。ボーナスの交渉では、春闘時にその年の年間賞与を決定する夏冬型が採用されていることが多い。24年の春闘ではベースアップの大幅拡大が注目されたが、ボーナスについても、好調だった 23年度の企業業績を反映して増額で妥結する企業が多かった。夏のボーナス増に続き、冬についてもこの交渉結果が反映される形で増加が予想される。
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毎期型の企業、あるいは組合が存在しない企業においては、より直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすいが、価格転嫁が進んだこともあって足元でも企業業績の好調さは持続していることから、大きな問題にはならないだろう。利益の水準も高く、従業員への還元余力は存在すると見て良い。こうした業績の改善が、ボーナス増の後押しとなる。また、人手不足感も強いままであることに加え、物価高への配慮も引き続き必要だ。今のところ夏と状況は大きく変わっておらず、冬のボーナスも増加する可能性が高い。
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夏と同様に、冬のボーナスでも中小企業を中心として賞与の支給事業所割合が増えることが予想される。この支給事業所の増加による影響を考慮した「全事業所における労働者一人平均賞与額」で見れば、冬のボーナスは前年比+5.6%の大幅増になると予想する。
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冬のボーナスで明確な増加が見込まれることは、家計の所得環境にとって大きな追い風となる。実質賃金は24年8、9月には前年比ゼロ%近傍の推移にとどまっているが、ボーナス支給時期である24年12月には明確なプラスとなるだろう。
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もっとも、物価上昇による実質購買力の抑制が消費の頭を押さえる状況は依然残る。現在、名目賃金はボーナスを除けば概ね前年比+3%程度で推移している。一方、食料品価格の予想以上の上昇もあって物価は引き続き高止まっており、賃金の実質化に用いられる「持家の帰属家賃を除く総合」は、当面+3%強での推移が続く可能性がある。前述のとおり冬のボーナス増加の影響で24年12月の実質賃金は明確な増加が予想されるが、それ以降については再びゼロ近傍での推移が続く可能性があることに注意が必要だ。個人消費の押し上げについて過度な期待は禁物と考える。