◆65歳以上の高齢者の体力は低下傾向にある!
70歳までの雇用・就業機会の確保に向けた取組みを行うことが努力義務として企業に課せられているなか、気になるデータが公表されました。
高齢者の体力の低下傾向が顕著であることが、スポーツ庁の体力・運動能力調査(2021年度)でわかったのです。特に、65〜74歳の男性の体力は過去10年間で最低を記録。週1日以上の頻度で運動している人の割合も同区分では減少しており、専門家は、「高齢者に運動習慣が広がり体力向上につながっていた流れが、頭打ちとなってきた」と警戒しています。
◆労働災害が増加する心配も……
高齢者の体力の低下は、労働災害の増加にもつながります。そもそも高年齢層の労働災害発生率は若年層に比べ相対的に高いのですが、これは身体機能や体力の低下といった高齢者特有の事情によるものと考えられるところ、今後ますます労働災害の発生件数が増えることが懸念されます。働く高齢者が増えるなか、企業としては、従来の想定以上に高齢者の体力が落ちていることを念頭に、安全に働いてもらうことのできる職場づくりを行っていかなければなりません。
◆特に重要な課題は「転倒対策」
特に意識して対応策を講じたいのは、年齢の上昇に着目した対策が必要な労働災害と位置づけられる「転倒災害」です。職場内の段差を極力なくす、通路を整頓して通行しやすくするといった対策を講じるとともに、厚生労働省作成の「転倒等リスク評価セルフチェック票」等を活用するなどして、自身の身体機能の状態について知っていただき、無理な動作をしないよう心がけてもらうようにするのが有効です。職種によっては、安全作業に必要な体力について定量的に測定する手法や評価基準について定め、高齢労働者の体力を把握することも必要でしょう。さっそく取組みを始めてみませんか。
【スポーツ庁「令和3年度体力・運動能力調査の結果について」】
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/2020/1421919_00002.htm